恋に恋する思春期、僕は幼馴染の女の子と付き合うことになった。
僕は若い欲望混じりに様々なことを期待したが、お互い高校入試を控えた受験生だ。
デートらしいデートなんてすることもなく、せいぜい一緒に下校する程度だった。
それでも、指定カバンにお揃いのキーホルダーを下げたり、シャープペンを交換したりして、二人だけのささやかな繋がりを大切に過ごしていた。
手を繋ぐのに勇気が要らなくなった頃、メールがなかなか返って来なくなった。
毎日となり合って勉強していた自習室でも、会えない日が増えた。
そんなある日、彼女が別の男の家へ通っていることを耳にした。
「他に好きな人ができたから別れて。」
素っ気無く言い放つ彼女に、僕は何も言い返せなかった。
新鮮な喪失感が残る頃、この間まで僕の名前を呼んでくれていた声を教室で耳にした。
「彼が着けたがらないから、そのまましてる。そのほうが気持ち良いし。」
僕が少しずつ積み上げた時間なんて、初めから無かったみたいだった。
実家から大学へ通う僕は、大きなお腹の彼女を駅で見かけた。
高校を卒業してすぐ子供ができて、その相手と婚約したらしいよ。
全く違う世界に住む彼女のうわさ話を、僕は他人事として聞き流した。